東京高等裁判所 昭和34年(ラ)391号 決定
抗告人等の提出した本件不動産の登記簿及び戸籍謄本によれば、次の事実を認めることができる。
相手方矢吹四郎は債務者国島金之輔に対する金銭消費貸借契約公正証書の執行力ある正本に基いて、貸金元本百二十三万円及びこれに対する約定利息等の弁済を受けるため、国島所有の本件不動産に対し強制競売の申立をなし、執行裁判所である原裁判所は昭和三十三年十月十四日強制競売開始決定をなし、翌十五日本件不動産についてその旨の登記手続がなされた。ところが、国島はこれよりさき昭和三十年二月二十四日島村利貞から金二十万円を、弁済期昭和三十一年二月二十五日、利息年六分その弁済期毎月末日、債務不履行のときは期限の利益を失い、期限後は日歩九銭の遅延損害金を支払う約定で借り受け、その担保として本件不動産に抵当権を設定するとともに、右抵当権の債務を期限に弁済しないときは代物弁済として本件不動産の所有権を移転する旨のいわゆる停止条件附所有権移転の契約をなし、右契約当日その旨の抵当権設定登記並びに所有権移転請求権保全の仮登記手続を了した。その後昭和三十一年二月二十四日右金銭消費貸借について弁済期を昭和三十二年八月二十四日、利息を年一割二分、債務不履行のときは日歩九銭八厘の遅延損害金を支払う旨の変更契約をなし、昭和三十一年八月二十四日その旨抵当権の変更登記手続がなされた。右島村は昭和三十二年五月九日死亡したので抗告人らが相続により右権利を承継し、昭和三十四年二月七日それぞれその旨の登記手続がなされた。ところが、国島は右債務の支払をしなかつたため、昭和三十四年五月一日停止条件が成就し、本件不動産の所有権は代物弁済により抗告人らに移転し、抗告人らは同月二十五日前記各仮登記についてその本登記手続を経由した。
上記認定の事実に徴すると、本件不動産について抗告人等のためになされた所有権移転の本登記手続は本件強制競売開始決定の登記後になされたものであるけれども、その効力は仮登記のときに遡つて生ずるのであるから、抗告人等は現在においては、その所有権取得を以て強制競売申立人である相手方に対抗できるものといわなければならない。